川崎市まちの樹50選・指定番号14
宮前区野川・影向寺のイチョウ(公孫樹)
時を超えて、古代の記憶に出会う
住宅街を抜け、静かな境内へ足を踏み入れると、そこには現代の街並みとは少し違う、ゆったりとした時間が流れています。
ここに佇むのが、天台宗の古刹、**影向寺(ようごうじ)**です。
「稲毛薬師」とも呼ばれるこの寺の本尊は薬師如来。
「影向」という言葉には、神仏がこの世に姿を現すという意味があります。
その歴史は、なんと1300年以上。
かつては奈良時代の天平12年(740年)、聖武天皇の勅願によって行基が建立したと伝えられていました。
ところが、時代を越えて眠っていた歴史が、発掘調査によって少しずつ明らかになります。
境内から出土した古い瓦などを手がかりに調査が進められた結果、影向寺の創建はさらに古い7世紀後半まで遡ることが判明。
まだ「川崎」という地名もなく、武蔵国と呼ばれていた古代の時代から、この場所には人々の祈りの場があったのです。
古代の姿を伝える「影向石」
境内でひときわ目を引くのが、「影向石」と呼ばれる大きな石。
これは、かつて境内に建っていた三重塔の中心を支えた礎石と考えられています。
「影向石」には、くぼみに水がたまる場所があり、その水で目を洗うと眼病が治るという信仰も生まれました。
その評判は遠くまで伝わり、江戸の名所を紹介した『江戸名所図会』にも「稲毛薬師堂」として登場しています。
江戸の人々も訪れた「稲毛薬師」
時代が江戸へ移ると、影向寺は「稲毛薬師」として広く知られるようになります。
現在残る薬師堂は、元禄7年(1694年)に再建されたもの。
幾度もの修理を受けながらも、その姿を今に伝えています。
街の中に残る、もうひとつの川崎
川崎というと、近代的な街並みや工業地帯を思い浮かべる人も多いかもしれませんが、少し足を延ばせば、そこには古代から続く歴史が静かに息づいています。
都会の喧騒から少し離れて、静かな境内を歩く。
川崎を訪れたなら、ぜひ一度、影向寺で「時の流れ」を感じてみてはいかがでしょうか。











